2012年4月19日木曜日

#003 - 1990.4.19 NHK FM Music Square

今晩はー!お元気ですか?布袋寅泰です。

えー今夜はパンクロック・ムーヴメントをフィルターに通してその中からシンガーに特にスポットを当てて色々紹介していきたいと思っています。

一般的にパンクっていうと、ピストルズとかねクラッシュとか、すごい暴力的なイメージだけで語られることが多いんですけれども、いつの時代も歌は世の中なり空気なりを反映させていくホントに表現手段の一つとして永遠に残っていくものだと思います。パンクという一つのムーヴメントを背景に独自のポップワールドを築いてきたシンガー達をボクなりの価値観で選んでみました。

さて初めに紹介する3人は、パンクのルーツとも言うべき人たちなんですけれども、その3人というのがルー・リード、イギー・ポップ、デビッド・ヨハンセンなんですけれども、この人たちが、それまでのロックが避けて通ってきた衝動的な気持ちだったり歪んだ愛の形などを独特のバイオレンスの色の強い表現方法で歌ったっていうところで、その後のパンク・ロックに与えた影響はとっても大きかったんじゃないかと思います。

それでは、元祖パンクの匂いを嗅いでもらいたいと思います。ルー・リードでロミオ・ハド・ジュリエット、イギー・ポップでファンタイム、デビット・ヨハンセンでファンキー・バット・チック!

Romeo Had Juliette / Lou Reed


Funtime / Iggy Pop


Funky But Chic(live) / David Johansen

えールー・リードは皆さんも知ってるとおり、65年から70年までヴェルヴェット・アンダーグラウンドというバンドで非常にアートに近い位置でのロック・ミュージックを創り上げた後にソロになって活躍している人で、アンディ・ウォーホルとの交流というところからね捉えたりすると、より深いところで共感できるシンガーです。

そしてイギー・ポップですが、ストゥージーズっていうバンドでバイオレンスの塊を演じてきたのか、本当にそうなのか知りませんけど、かなり過激な存在だった人です。最近は何が本当にやりたいのか判らないんですけれども、以前僕がレコーディングでベルリンに行った時、ばったり空港で会いまして、恐る恐る日本のコンサートを観たって言ったらニコニコして握手してくれました。えー奥さんが日本の人でね、かなり惚れてるっぽい印象がいまだに残っています。

そして、デヴィッド・ヨハンセンは、元祖お化粧バンドのニューヨーク・ドールズのヴォーカルだったんですけれども、パワフルな歌いっぷりは名前が変わっても健在です。

そういえば最近は日本のバンドもすごいお化粧する人たちが増えてきましたね。僕がライブハウスでやってた頃なんかはすごい変な目で見られたけどなぁ。僕がステージでお化粧するっちゅうのは単純に人に見せられる顔ではないっていうところで、決して美しくなりたいからっていうナルシスティックなところではないっていう・・・だってこの間、BUCK-TICKのあっちゃんっていう人をね、目の前でみた時は次の日から鏡見れなくなっちゃいましたから。花田くんもいい男だなと思っていたけど、普通の男に見えてきちゃったもんね、最近。

さてお化粧話はさておいて、次の曲を聴いてもらいましょう。グラハム・パーカーでヒート・トリートメント。

Heat Treatment / Graham Parker

はい!パブロックの真髄を感じさせるグラハム・パーカーでした。えーさて次に紹介する人も、この人もパブロックの流れをポップなアプローチで受け継いだホントにもう巨匠です。ニック・ロウでアイ・ニュー・ザ・ブライド。

I Knew The Bride / Nick Lawe

えーイギリスにはね、たくさんのパブがあって、そこでバンドがプレイをするんですけども、そこで生まれたリズム&ブルースをベースにした音をパブロックと皆さんいうんですけどね、音楽がすごい身近な存在というか純粋に楽しめる空気があるというかね、ビールを飲みながらみんなでワイワイやってる雰囲気は僕も大好きでイギリスに行った時はよく足を運びます。皆さんも、もしね行く機会があったらキングスロードだけじゃなくてパブに足を向けて音楽を楽しんでみてください。

次にこの曲をいきましょう、イアン・ドゥーリーでインビトウィーニーズ。

Inbetweenies / Ian Dury & the Blockheads

清志郎さんのソロでブロックヘッズの演奏を耳にした人も多いと思いますけども、本当にこのバンドは達者な人たちで、特にこのDO IT YOURSELFっちゅーアルバムはうねりがあってね、僕はデビルブラザーズとかと同じところで評価しています。そういえば、この間チャボさんのコンサートで「ちょっと、どっか飲みにいきましょうよ。」とお誘いしたら「君も早く子供作りなさい。」と訳のわからないことを言われてしまいました。えー竜平くんはもうお寝んねの時間かな?ちょっと怖い子守唄をプレゼントします。ケイト・ブッシュでバブーシカ。

Babooshka / Kate Bush


えーと、ここでお便りを紹介したいと思います。京都のユミXOKさんと読むんですかね? 「Dear My Hoteiさん、こんにちは」今晩は。「うーん、なかなかドキドキする。心が膨張してエンディングのエリック・クラプトンで心臓いたくなっちゃたわ。20曲近くも布袋さんの好きなのばっかで参ったな、こりゃ。もう嬉しいったらありゃしない。それに布袋さんの声って優しいし、ボヨヨーンという匂いがするの」やっぱそうなんですかね、気にしてるんですけどね。「夢の中で聞いてる好きな人からの電話のベルみたい」まーロマンチックな。「でなかったら、クリームシチューに入ってるカリフラワーが私は好きなんだけどそんな感じ」そんな感じだと僕も思います。「今度もし嫌いじゃなければ、ケイト・ブッシュとかスージー・クアトロとかブロンディとか女の人のボーカルかけてね」 そういったわけで女性シンガーも例に漏れずキッチュに力強く歌い上げたのでありました。ユミさんからのリクエストに応えるっちゅー意味も含めて2曲続けて聴いてください。デボラ・ハリーでサンデー・ガールを今夜はフレンチヴァージョンで、パティ・スミスでピープル・ハヴ・ザ・パワー。

Sandy Girl - French version / Blondie


People Have the Power / Patti Smith


はい、次に紹介するのはニナ・ハーゲンなんですけれども彼女は東ベルリンに生まれて15歳くらいからオペラ歌手として活躍してたんだそうです。僕もボウイをやってる時にベルリンには、えー西の方ですけどベルリンには何度も訪れていて、えー壁には独特の、まー独自の思い入れがあるわけなんですけれども。去年ですね、壁がなくなるということで、僕はどうしてもそこに行って感じたかったんでベルリンに行ってきまして、うーん、まーいろいろ複雑な問題とかも含んでいるんだろうけれども、とても喜ばしい出来事の一つじゃないかなと僕は思います。えー彼女なんですけれども、その独特のオペラ唱法は、ねぇ、時には優しく特にはろくろっ首よりおっかなく聴いている人を包み込みます。今夜はロマンチックなやつをかけましょう。ニナ・ハーゲンでホールド・ミー。

Hold Me / Nina Hagen


はい、ニナ・ハーゲンでホールド・ミーを聴いてもらいました。もう歌うまいですね!こんだけうまいと本当に気持ちいいだろうなって尊敬しちゃいます。 もう一人女性ボーカル紹介したいと思います。 その変幻自在のボーカル・スタイルっていうところではニーナとすごい似たようなタイプかもしんないんですけれども、もうちょっと彼女の場合は文学少女的な香りの強い人だと僕は感じるんですけれども、皆さんはどう感じるでしょうか?リーナ・ラヴィッチでラッキー・ナンバー。

Lucky Number / Lene Lovich


さて、パンクを背景に活動を続けているシンガーを今夜は紹介していますが、次はかなりのインテリだと感じさせてくれる3人を聴いてもらいたいと思います。えー3人続けて聴いてもらいたいと思います。ピーター・マーフィーでシャイ。ジョー・ジャクソンでアイム・ザ・マン、ライブ・アルバムから。トーマス・ドルビーで、まるで映画の1コマのような曲です、ザ・キー・トゥ・ハー・フェラーリ。

Shy / Peter Murphy


I'm the Man(live) / Joe Jackson

I'm the Man - live / Thomas Dolby


今夜のマイ・カウントダウンは、第二のポール・マッカートニーとでもいえるエルヴィス・コステロを取り上げてみたいと思います。ポール・マッカートニーの話になっちゃういますけども、この間来たときにね来日公演に行ったんですけれども、 まー比較すること自体が間違っているのかもしれないけどバンドの存在自体に感動できたっていうか感動しちゃったストーンズに対してポールの場合は曲や歌で泣けちゃったな。なんつーか目つぶっていても瞼と瞼の隙間から涙が流れてしまう的なね。やっぱメロディ作りのセンスは天才的な人だなと思いました。最近では特にビートルズではポールのレコード聴いてなくてコンサート観たら、なんちゅうか、俺ってポール・マッカートニー好きだったんだなぁ、ってフィード・バックしちゃうものがありました。

さて、このエルヴィス・コステロさんなんですけれど、なかなかどうしてやります!うん!彼もバディ・ホリーを愛してやまないわけなんですけど、ポール・マッカトニーもバディ・ホリーがすごいアイドルみたいな人でこの2人が組んだのも運命というか、同じ穴の狢っちゅうか、まぁそんなことはおいといて僕がもしコステロから選ぶとしたらこの3曲です。ノー・アクション、オリヴァーズ・アーミー、そしてアクシデンツ・ウィル・ハプン。

No Action / Elvis Costello and the Attractions

Oliver's Army / Elvis Costello and the Attractions


Accidents Will Happen / Elvis Costello and the Attractions


はい!エルビス・コステロを3曲続けて聴いてもらいました。コステロ聴いておわかりいただいたように、パンク・ムーヴメントってね一口にいってもかなりメロディを中心に作られた形っていうのもたくさんあるわけでして、なかなかバカにしちゃいかんわけです、はい。リズムとメロディがホントに一体化した時は何も怖いものないわけで、わかっちゃいるけど、いざやろうとすると、なかなか難しいもんなんですけどね。コードの使い方ってすごい難しいし自分で曲とか作っていても どうもメロディだけういていっちゃたりとかコードがついてこなかったり、それにリズムのっけるとまたなんか曲のイメージから離れて行っちゃたりとか。

で、お手紙でも何通かきてたんですけれども、僕はどうやって曲をつくるんですか?みたいな質問が多かったんですけれども 僕はちっちゃいときにピアノを何年かやってまして ピアノでメロディ考える時が多いかなぁ。 ギターって逆に、リフとか、リフっていうのは、えーっと何て説明したらいいんだろう?うーん、まーリフなんですけど、リフとかリズムを刻む楽器として、なんか、んー手にしたから、メロディちゅうのはピアノや鍵盤のが作りやすかったりしますね。

はい、次に紹介する3曲は、えーホント、メロディが心に染みるというんですか、有無を言わさずその世界に 引き込んでくれる3曲です。 とくに失恋したてのあなたと受験や就職がうまくいかなかったあなたに贈ります。 マーク・アーモンドでサムシングズ・ガットゥン・ホールド・オブ・マイ・ハート、スティングでフラジャイルをスペイン・ヴァージョンで。そしてロバート・ワイヤットでシップビルディング。

Something's Gotten Hold of my Heart / Marc Almond


Fragilidad / Sting


Shipbuilding / Robert Wyatt


はい!今夜はパンクを通り過ぎていったシンガーをピックアップして聴いてもらいました。いかがだったでしょうか?

自分の放送をね、一応友達とかに聴いてもらってチェックしているんですけれど、ちょっと堅すぎるだの曲が暗いだの古いだの色々言われてるんですけど、まーだんだんと聴きやすくなっていくとは思いますんで、大目に見てやってください、はじめのうちは。かといってハーイ!今晩は!布袋寅泰でーす!!みたいになりたいわけでもないので、こんな感じは抜け出せないと思うんですけどね。

さて、ここでもう一通のお手紙を紹介したいと思います。 ミヤケケンジくんからなんですけれども、
はじめまして。第一回の放送を聴きました。 聴いた感想、とにかく聴いていて体が震えました。そして涙がポロポロ出てきました。本当にロマンテイックな夜でした。 17年間の中でとびっきり素敵な夜でした。 そして一番音楽の大きさというかロマチックさを感じた夜でした。 1時間半という時間があっという間にすぎ 夢見心地というかなんというか不思議な時間でした。 僕が布袋さんのファンになったのは2年くらい前なんですけれども、今つくづくよかったな思うのは こんな素直な心で音楽を愛する人を好きになれたことです、そして出会えたことです。 布袋さんと出会ってから音楽が好きになったし、少しは素直な心で聴けるようになったし 布袋さんのようなギタリストになるという夢もできました。 人から見ればちっぽけな夢かもしれないけど 僕はこれからの人生を、この夢の欠片を大切にして生きていきたいと思います。 これからも素敵な放送を続けてください。本当に素敵な夜をあありがとうございました。 本当に素敵な夜をありがとうございました。
いや、こちらこそ、本当にどうもありがとうございました。 えー この番組で、僕は僕を好きになってもらいたいわけではなくてですね、初めの放送でもいったように、 音楽との出会いの瞬間みたいなものを、聴いているみんなと 少しでも共有できたらいいなぁと思っているので、それが少しでも伝わったんだなぁと思うと本当に嬉しいです。はい。

他にもたくさんお便りきています。どうもありがとう。 懲りずにどんどん送ってください。 リクエストや番組の感想など内容は問いませんのでヨロシク! なるべくハガキに書いてくれると読みやすいので、なるべくハガキで送ってください。

さて、そろそろお別れの時間になりましたけれども、えーひょっとしたら この人がパンクのゴッドファーザーなんじゃないか、と思えるフランク・シナトラのマイ・ウェイを聴きながらお別れします。みんなもこの歌のように 信じた道を真っ直ぐに生きていってほしいと思います。 それでは、来週のこの時間にまた会いましょう。

よい夢を、おやすみー。

My Way / Frank Sinatra











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